大腸ポリープの種類や治療方法について、わかりやすく解説します。
大腸ポリープとは、大腸の粘膜にできる“できもの”のことです。小さなものは自覚症状がないことがほとんどですが、放置するとがんになる可能性があるものもあります。大腸ポリープにはいくつかの種類があり、見た目や性質が異なります。
■ ポリープの種類
1. 腺腫(せんしゅ)
もっともよくみられるポリープで、がんの前段階と考えられています。5mm未満の腺腫が大腸がんである確率は0.4%以下、5-9mmでは3.4%、10-19mmでは12-20%、20mm以上では26-32%と大きくなるにつれ大腸がんである確率が上昇します。
2. 過形成性(かけいせいせい)ポリープ
良性のポリープで、がんになることはほとんどありません。小さくて形が整っているものは治療の必要はありません。
3. 鋸歯状(きょしじょう)ポリープ
見た目が過形成性ポリープに似ていますが、一部はがんに進展するリスクがあります。
4. 炎症性(えんしょうせい)ポリープ
慢性的な炎症によってできるポリープで、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患に伴ってできることがあります。炎症が長期間続くことでがんが発生することがあるといわれているため、定期的な検査が大切です。
■ 治療法について
がんに進展する可能性のある腺腫、鋸歯状ポリープが内視鏡治療の対象となります。ポリープの形や大きさによって、以下のような方法が選ばれます。
- ポリペクトミー:茎のあるポリープに対して、スネアと呼ばれる金属製の輪をかけて高周波電流で切除する方法。
- コールドポリペクトミー:9mm以下の平坦なポリープに対して、スネアをかけて電気を流さないで切除する方法。
- 内視鏡的粘膜切除術(EMR):20mm以下のポリープに対して、生理食塩水を病変の下に注射して浮かせてからスネアをかけて高周波電流で切除する方法。
- 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD):20mmより大きなポリープ(大腸がん)に対して、粘膜下層にヒアルロン酸やアルギン酸などの粘調度の高い液体を注射して浮かせてから、1.5-2mmの電気メスで粘膜下層を丁寧に剥がしながら切除する方法。
ポリープが見つかった場合、多くはその場で切除が可能ですが、大きさや形によっては専門の医療機関での治療が必要になることもあります。ポリープの治療については、日本中どこの病院でもガイドライン(国が定めた治療方針)に沿って治療されていると思われます。ただ、クリニックや病院によってできる治療は異なります。
大腸がんに対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は穿孔のリスクが高く手技の難易度が高いため、国が定めた施設基準を満たした病院でなければ行うことができません。当院は施設基準を取得し、大腸がんの治療を行っています。外科手術は一人ではできませんが、内視鏡治療(手術)は術者が一人でよいため、医師の少ない地域の病院でも実施可能となっています。
■ 治療後の経過観察について
切除したポリープは病理検査(顕微鏡で細胞を観察して診断します)で詳しく調べられ、今後の経過観察の方法や治療方針が決まります。大腸がんと診断されても、粘膜から粘膜下層の浅い部分にとどまる早期の段階であれば、内視鏡治療でほぼ完治します。また、ポリープ(腺腫)ができていた方はポリープができやすい体質になっている可能性があるため、1~3年に1回の定期的な内視鏡検査をお勧めします。
■ まとめ
大腸ポリープを切除することで大腸がんを76~90%低下させることができたとの報告もありますので、内視鏡検査を受けることはがんの予防にもつながる大事な一歩になります。便潜血検査で陽性を指摘された方や、何か気になる症状のある方は、内視鏡検査を受けてみましょう。