緩和ケアについて

緩和ケアについて知っている方も多いと思いますが、「がんの末期に受けるもの」「治療できなくなった人のためのケア」と思っている方もいらっしゃいますので、緩和ケアに対する誤解を解きながら、考え方や役割についてわかりやすく解説したいと思います。

緩和ケアとは

病気にともなう「からだ」と「こころ」のつらさを少しでも和らげて、できるだけその人らしく生きられるように支えるケアのことです。対象となるのは、がんだけではなく、心不全、慢性呼吸不全、ALSなどの慢性疾患も含まれ、診断された時から始まります。つらいと感じた時は専門のチームが対応してくれるので、遠慮なく緩和ケアチームを頼っていただければと思います。


緩和ケアが向き合うのは、体の痛みだけではありません。人が病気になると、さまざまなつらさが重なります。

  • 身体的な苦痛:痛み、息苦しさ、吐き気、倦怠感など
  • 精神的なつらさ:不安、落ち込み、怒り
  • 社会的な不安:家族のこと、お金のこと、仕事のこと
  • スピリチュアルな苦悩:生きる意味、死への恐れ、孤独感

緩和ケアは、こうした「からだ」と「こころ」と「その人の生活」を支えるケアなのです。


「自分らしく生きる」を大切に

「家で過ごしたい」「自分でできることは自分でしたい」など、一人ひとりに大切な願いや価値観があります。

緩和ケアは、そうした思いを尊重しながら、「自分らしく生きる」を支えることを目標にしています。


チームで支えるケアです

緩和ケアは、医師だけではなく、看護師、薬剤師、管理栄養士、臨床宗教師、臨床スピリチュアルケア師、臨床心理士、ソーシャルワーカー、理学療法士、作業療法士など多職種のチームで行うケアです。それぞれの専門性を生かして、患者さんとご家族に寄り添います。


当院の緩和ケア

緩和ケアチームを結成して4年目となります。カンファレンスの機会が増え、患者さんの痛みやつらさ、不安などをチームで評価したり対応することができるようになってきました。患者さんやご家族から「ありがとう」と言われる機会が増えたと感じています。一人ひとりの気持ちに耳を傾け、その人が何を望んでいるのか、どのように過ごしたいのかを考える姿勢が、職員の中に少しずつ根づいてきて、緩和ケアの視点を通じて病院全体のケアの質も高まってきています。病院全体が一つのチームとなり、患者さんやご家族に寄り添うことができているという実感を持てるようになってきました。

今後の取り組み

これまで地域で開催されている「がんサロン」に参加したことはありましたが、「がん哲学外来カフェ」という取り組みについては知る機会がありませんでした。7月12日、13日に大分県で開催された「がん哲学外来市民学会」に参加し、「がん哲学外来」の創始者である樋野興夫先生の温かいお話に直接触れる機会がありました。医師ではなくひとりの人間として「言葉の処方箋」で一人ひとりの心に寄り添う姿勢に感銘を受け、当院でも「がん哲学外来カフェ」を開催することを決めました。病気にともなうつらい思いや不安に少しでも寄り添えるように、一歩ずつできることから始めていこうと思います。

次回のブログは、「がん哲学外来カフェ」についてお話ししたいと思います。

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