普段はおとなしいネコでも、急にかみつくことがあります。機嫌が悪いとかみつくことがありますが、春から夏にかけては発情期の影響で神経質になり咬傷リスクが上がるという報告があります。
ネコに咬まれた傷は、見た目はたいしたことがなくても、化膿することが多いので注意が必要です。イヌに咬まれた場合は10~20%の感染率ですが、ネコに咬まれた場合は50~80%という高い確率で感染が起こると言われています。今回は、ネコに咬まれたときに起こりうる感染症と対処法について、わかりやすく解説したいと思います。
ネコに咬まれると、なぜ危険?
ネコの口の中には、多くの細菌がいます。ネコの歯は細く鋭いため、傷が小さくても皮膚の奥まで達するため菌が体内に残ってしまい、感染を起こしやすいと考えられています。
ネコ咬傷で気をつけたい主な感染症
① パスツレラ症
- 原因菌:パスツレラ・ムルトシダ
- 症状:咬まれた部位の腫れ・赤み・激しい痛み
- 潜伏期間:数時間〜1日
- 特徴:ネコの約7〜9割がこの菌を保菌していると言われ、感染を放置すると関節炎や骨髄炎に進行することもあります
② カプノサイトファーガ感染症
- 原因菌:カプノサイトファーガ・カニモルサス
- 症状:発熱、倦怠感、皮膚の変色、出血班
- 特徴:重症化すると敗血症や壊死性筋膜炎に進行し命に関わることもあります
③ 破傷風(はしょうふう)
- 原因菌:破傷風菌
- 症状:口が開けにくい、筋肉がつる、けいれんなど
- 予防:破傷風ワクチン接種が有効です
④ 狂犬病
- 原因:狂犬病ウイルス(日本では撲滅されていますが、海外では感染のリスクあり)
- 症状:発熱、食欲不振、咬傷部位の痛み・かゆみ、不安・興奮などの神経症状
- 潜伏期間:1~3か月
- 特徴:発症すると致死率はほぼ100%
ネコに咬まれたときの正しい対処法
- すぐに傷口を流水と石けんでよく洗う(5〜10分)
- アルコールや消毒液で消毒する
- 医療機関を受診する
- 傷が深ければ奥の方までしっかり洗浄する
- 化膿していたら傷口は閉じないで様子をみる
- 感染のリスクを評価して、抗生物質や破傷風ワクチンを使用する
こんな症状があれば、すぐ病院へ!
- 傷が赤くなったり腫れて痛みがある
- 膿(うみ)が出る
- 熱が出る、だるい、吐き気
- 手足・指が動かしづらい、しびれる
- 皮膚の色が変わってきた(紫色、黒っぽい)
まとめ
ネコに咬まれるのは珍しいことではありませんが、小さな傷から大きな病気に発展することもあります。症状が悪化して受診される方も多く、ひどい場合には指などの運動障害が残ったり、指の切断が必要になることもあります。「これくらい大丈夫」と思わずに、早めに医療機関を受診して適切な治療を受けることが重要です。