「がん哲学」という言葉を聞いたことがありますか?
がんと診断されたとき、多くの患者さんがショックを受け、「なぜ自分が?」「これからどうしたらいいの?」と悩みます。
そんな時、病気と共存して自分らしく生きるヒントを与えてくれるのが「がん哲学」です。
「がん哲学」とは何か、その背景や目的、そして私たちの日常にどう活かせるのかをわかりやすく解説したいと思います。
「がん哲学」とは?
「がん哲学」という言葉は、順天堂大学名誉教授である、樋野 興夫(ひの おきお)先生が提唱したものです。「哲学」というと難しい学問を思い浮かべるかもしれませんが、哲学という言葉には「知を愛する」すなわち「生きる知恵を求める心」という意味があります。生きる意味を知ったことで、塞ぎ込んでいた気持ちに灯りがともったと感じる人も多くいて、樋野先生が「がん哲学外来」で伝えてきた「言葉の処方箋」が、生きる意味を教えてくれたと多くの人が語っています。その「言葉の処方箋」の一部には以下のようなものがあります。
- 病気を“敵”と見るのではなく、人生の一部として受け入れる
- 病気ではあるが病人ではない
- あなたはただそこにいるだけで、価値のある存在
なぜ「哲学」が必要なの?
医学が進歩して治療成績が良くなっていますが、「がん」と診断された時や治療後に感じる不安な気持ちはなくなることはありません。医師は病気や治療についての説明をしますが、外来で話をする時間は限られているため、患者さんは十分に自分の気持ちを伝えることができない。そのような、医療と患者さんの隙間を埋める存在や言葉が必要であると樋野先生はおっしゃっています。
- 人には生きていくための「基軸」となる言葉が必要
- 病気について解決するのではない、すこしでも解消したらいい
- 自分の「使命」や「役割」を考えることで前向きに生きることを気付かせてくれる
「がん哲学外来カフェ」って何?
がん哲学の実践の場として全国に広がっているのが「がん哲学外来カフェ」です。カフェというリラックスした雰囲気の中で、「話す」「聴く」ことを通じて、心が軽くなる時間を提供してくれます。
がん哲学外来カフェとは
- 医療者や専門家に限らず、誰もが参加できる対話の場
- がん患者さん・ご家族・地域の方が集い、思いや悩みを自由に語ることができる
- 答えを出すのではなく、共に考え、支え合う時間を共有する
- 前向きに生きるための気付きを教えてくれる存在
- マイナス×マイナスはプラスになる
(ネガティブな人同士がかかわると心がポジティブに転じる)
きりかぶカフェ
先日初めて参加したがん哲学外来市民学会で、偶然にも隣の席に座っていた樋野先生とお話しさせていただくことができました。樋野先生の温かいお話やがん哲学外来カフェの取り組みについての講演に感銘を受けました。樋野先生から、「誰にでもできるんだから、あなたのところでもカフェをやったらいいよ」と勧められ、緩和ケアの一環として「がん哲学外来カフェ」を開催することを決めました。名称につきましては、玖珠町の人々に昔から親しまれてきた「伐株山(きりかぶやま)」からお借りして、「きりかぶカフェ」と名付けました。そして「きりかぶ」にはもう一つ大切な意味があります。大きな木が伐られてもそこには新たな芽が生まれ命が受け継がれていきます。再生と希望の象徴である「きりかぶ」にがん患者さんに対する願いを込めました。
8月30日(土)に第1回きりかぶカフェを開催します。詳細につきましてはホームページ、インスタグラムにお知らせを載せたいと思います。聞くだけでも構いません。お気軽にご参加ください。