草刈りやキャンプなど屋外で活動する機会が多い季節となりました。毎年多くの患者さんが「ハチ刺され」で受診されます。ただ痛いだけではなく、全身にアレルギー反応が起こることもあり、注意が必要です。危険な時期については、アシナガバチは7~8月、スズメバチは7~10月、ミツバチは一年中危険といわれています。全身に激しいアレルギー症状が起こる「アナフィラキシー」を中心に、注意すべき症状や対処方法についてわかりやすく解説したいと思います。
ハチ刺症(はちししょう)
ハチに刺されることで起こる局所的な炎症や腫れなどの反応をハチ刺症と呼びます。
主な症状:刺された部位の痛み、腫れ、赤み、かゆみなど
これらの症状は遅れて出てくることがありますが、数時間〜数日で軽快することが多いです。
ハチアレルギー
ハチの毒に対してアレルギー反応を起こす状態です。特に「アナフィラキシー」と呼ばれる重篤な全身性のアレルギー反応には注意が必要です。
アナフィラキシーの症状:
- 全身のじんましん、赤み、かゆみ
- 呼吸困難、喘鳴ぜんめい(ゼーゼー、ヒューヒュー)、くしゃみ
- 目のかゆみやむくみ、くちびるのはれ
- はき気、腹痛
- めまい、冷や汗、意識低下、血圧低下
※これらの症状は刺されてから15分以内に現れることが多く、迅速な対応が必要です。
※ハチ毒にアレルギーがあると、刺された人の約10~20%にアナフィラキシーを起こすといわれています。その中でも数%の方に意識障害や血圧低下などのアナフィラキシーショックを起こすとされ、命を守るための対処が必要となります。
ハチに刺された時に行うべき対処方法
- 涼しい場所で安静にする
- 毒針が残っていれば抜く(クレジットカードなどではらうようにする)
- 刺された部位を流水で洗う(刺された部位をつまんで毒液をしぼるようにする)
- 冷やしてはれや痛みを和らげる
※指やピンセットでつまむと毒液を押しつぶして症状を悪化させることがあるようです。
アナフィラキシーが疑われる場合
- すぐに救急車を呼ぶ(119番)
- エピペンを処方されている人はすぐに自己注射する
- 安静を保ち、足を高くして待機する
※エピペンを自己注射をしたあとは必ず病院受診してください。
検査(ハチアレルギー)
以前にハチに刺されて強いアレルギー反応が出たことがある人や職業上ハチに刺されるリスクが高い人は、病院で相談をしてください。
血液検査でハチ毒に対する抗体を調べることができます。(刺された直後に検査をしても正しい結果が得られませんので、1か月くらいおいてから検査を受けてください。)
※スズメバチとアシナガバチには交差反応性があり、過去にススメバチに刺された場合に次にアシナガバチに刺されてアレルギー症状が出ることがあります(ミツバチには交差反応性はないといわれています)。
治療
痛みやかゆみに対しては、抗ヒスタミン薬の内服やステロイド外用薬などで対応します。
アナフィラキシーによる血圧低下や呼吸困難に対しては、アドレナリンの注射をします。
※ハチアレルギーを起こしたことがある人やアレルギーを起こす可能性が高い人は、アドレナリン自己注射薬「エピペン」を携帯しておくことをお勧めします。
ハチに刺されないための対策
- スズメバチなどの巣には近づかない
- 暗い色の服や香水はハチを引き寄せるため控える
- 出くわしたときは、身を低くしてゆっくり距離をとる
- ふりはらったり、大声を出したりしないようにする
まとめ
ハチに刺されること自体はよくあることですが、アレルギー体質の人にとっては命に関わる問題になることもあります。1回目より2回目の方が症状が強く出ることが多いため、短期間でハチに刺された時は注意が必要です。ハチアレルギーによるショックでの死亡例は年間20名前後と決して少なくありません。もし少しでも異変を感じたら、自己判断せずにすぐに医療機関を受診しましょう。