マダニが多くなる季節です

マダニは草むらや山林などに生息しており、人や動物から吸血します。咬まれても痛みは少ないため、気づかないうちに吸血されていることがあります。気温が15℃以上になる4~10月に活動が活発になり、当院にもマダニに刺されて受診する患者さんが毎年いらっしゃいます。マダニに刺されると重篤な感染症を発症することがあるとの報道があり、心配される方も多いため、マダニの対処方法とマダニに関連した感染症についてわかりやすく解説したいと思います。

マダニとは?

マダニは野外に生息する大型のダニで、屋内に生息するダニ(コナダニ、ヒョウヒダニなど)とは種類が異なります。
マダニは、固い外皮に覆われた比較的大型(吸血前で3~8mm、吸血後は10~20mm程度)のダニです。山に生息しているイメージがあるかもしれませんが、市街地(公園や庭など)にも生息しています。

マダニに咬まれたらどうする?

無理に引き抜こうとすると口の部分が皮膚に残って化膿や感染症の原因となることがあります。病院を受診して、適切な処置を受けるようにしてください。当院ではティック ツイスターと呼ばれる器具でマダニを除去します。マダニをつぶすことなく皮膚切開もしないで除去できるため、感染症のリスクを下げられるのではないかと思われます。


マダニが媒介する主な感染症

  • SFTS(重症熱性血小板減少症候群)

     発熱・嘔吐・下痢・腹痛・意識障害などを起こすウイルス感染症。致死率が高い(10~30%)

  体液や血液を介してペットから人(人から人)に感染する可能性があります。

  西日本に多く、年間100~130件の報告あり。 潜伏期は6日~2週間程度。4類感染症、保健所に届け出が必要。

  • 日本紅斑熱

     発熱・発疹・頭痛などを起こすリケッチア感染症。刺し口が見つかることが多い。

  西日本に多く、年間400~500件の報告あり。潜伏期は2~8日。4類感染症、保健所に届け出が必要。

  • ライム病

     発熱・関節痛・倦怠感などを起こすスピロヘータ感染症。マダニ刺咬部を中心に広がる紅斑が特徴。

  欧米で多く見られ、日本でも本州中部以北(北海道に多い)で報告あり(年間20~30件)。潜伏期は3日~32日。

  4類感染症、保健所に届け出が必要。


マダニに咬まれないための予防策

  •  肌の露出を避ける(長袖、長ズボンを着用し、シャツの裾をズボンに、ズボンの裾を靴下に入れる)
  •  明るい色の服を着る(マダニを目視しやすくするため)
  •  虫よけスプレー(ディートまたはイカリジン含有)を使用する
  • 野外活動後は入浴し、全身をチェックする
  • ペットのマダニ対策をする(ウイルスに感染した犬や猫から人に感染した例も報告されているため、ペットとの過剰な接触は避け、触った後は必ず手洗い等をしましょう)


まとめ

マダニに咬まれたら、自分で無理に取らず必ず医療機関を受診するようにしてください。

マダニに咬まれた後1~2週間程度は体調の変化に注意し、発熱などの症状が見られたら早めに病院を受診し、マダニに咬まれたことを申し出てください。

致死率の高いSFTS(重症熱性血小板減少症候群)の報道を耳にすることがあり心配になりますが、マダニがウイルスを保有している確率は0~数%(地域により異なります)と報告されていますので、発症する頻度はそれほど多いものではないと思われます。

感染症を起こさないためには、予防が何よりも大切ですので、屋外の作業やキャンプに行く際は服装や虫よけの対処をするようにしましょう。

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